「本当はどうしたい?」

そう聞かれたとき、すぐに答えられるでしょうか。

「やりたいことは何?」

「どんな人生を送りたい?」

「何が好き?」

こう聞かれて、

「これがしたい!」

と迷いなく答えられる人もいるかもしれません。

でも、僕はむしろ、

「うーん……何だろう」

となってしまう人のほうが、少なくないと思っています。

そして、そんな自分に対して、

「自分にはやりたいことがない」

「自分には夢がない」

「自分は意志が弱い」

と思ってしまう。

でも、本当にそうなのでしょうか。

もしかすると、「やりたいことがない」のではなく、

自分の本当の気持ちを聞くことに、慣れていないだけなのかもしれません。


「やりたいことが分からない」のは、意志が弱いからではない

「夢を持とう」

「やりたいことを見つけよう」

「好きなことを仕事にしよう」

そんな言葉を、僕たちはよく耳にします。

もちろん、前向きな言葉です。

でも、そう言われるほど苦しくなる人もいます。

「自分には、そんなものがない」

と思ってしまうからです。

周りには、

「将来はこんな仕事がしたい」

「こんな夢がある」

「休日はこれをしている」

という人がいる。

一方で自分は、

「特にやりたいことはない」

「何が好きなのかもよく分からない」

となってしまう。

すると、

「自分には情熱がない」

「何をやっても続かない」

「自分はつまらない人間なんじゃないか」

と、自分を責めてしまう。

でも、ここで一度立ち止まってみたい。

本当に「やりたいことがない」のか。

それとも、

「やりたい」と感じたときに、その気持ちを無視する習慣が身についているのではないか。


周りの期待に応え続けると、自分の気持ちが分からなくなる

僕たちは、小さい頃からいろいろなことを教えられます。

「ちゃんと勉強しなさい」

「人に迷惑をかけないように」

「いい子にしなさい」

「将来困らないように」

「安定した仕事に就きなさい」

こうした言葉には、もちろん愛情や善意があります。

社会で生きていくために必要なこともたくさんあります。

でも、こうした「こうするべき」を長い間優先していると、ある問題が起こります。

それは、

「自分がどうしたいか」より「どうするべきか」を考えることが癖になること。

例えば、

「今日は何を食べたい?」

と聞かれても、

「どこでもいいよ」

と答えてしまう。

「何がしたい?」

と聞かれても、

「みんながやりたいことでいいよ」

となる。

一見すると、優しくて協調性のある人です。

でも、それが積み重なっていくと、

「僕は本当は何がしたいんだろう?」

ということが、だんだん分からなくなっていきます。


「やりたい」より「やるべき」を優先していないか

自分の気持ちを知るために、まず意識してみたいのが、

「やりたい」と「やるべき」を分けること

です。

例えば、

「仕事を頑張らなければ」

「もっと勉強しなければ」

「お金を稼がなければ」

「結婚しなければ」

「人に迷惑をかけないようにしなければ」

「ちゃんとした大人にならなければ」

こうした「~しなければ」は、たくさんあります。

もちろん、責任を果たすことは大切です。

でも、

「僕は本当にこれを望んでいるのか?」

と、一度考えてみる。

すると、

「これは自分がやりたいからやっている」

というものもあれば、

「誰かに認めてもらうためにやっている」

「怒られないためにやっている」

「普通だと思われたいからやっている」

というものもあるかもしれません。

どちらが正解というわけではありません。

ただ、

自分の人生の中に「自分の意思で選んでいるもの」がどれくらいあるのか。

それに気づくことが大切なのだと思います。


「本当はどうしたい?」に答えるのが怖いこともある

実は、自分の本音が分からない理由は、

「分からない」のではなく、

分かってしまうと困るから

という場合もあります。

例えば、

「本当は今の仕事を辞めたい」

と思っていたとしても、

「でも生活がある」

「周りに迷惑をかける」

「次の仕事が見つからないかもしれない」

という現実があります。

だから、

「本当はどうしたい?」

という問いに蓋をして、

「今のままでいい」

と思おうとする。

あるいは、

「本当はこの人と一緒にいたい」

と思っていても、

「嫌われるかもしれない」

「断られるかもしれない」

という怖さがある。

だから、

「別にそこまで好きじゃない」

と思おうとする。

つまり、

自分の本音を知ることと、その本音を実現できることは別の問題です。

ここを分けて考えると、少し楽になります。


「本当はどうしたい?」と「実際にどうする?」は分けていい

これは、自分の気持ちを知るうえで大切な考え方だと思います。

例えば、

「本当は仕事を辞めたい」

と思ったとします。

だからといって、

「じゃあ明日辞めよう」

という話ではありません。

まず、

「僕は本当は辞めたいと思っているんだ」

と認める。

その上で、

「じゃあ、生活費はどうする?」

「いつ辞める?」

「次は何をする?」

と現実的な問題を考えていけばいい。

同じように、

「本当はもっと自由に生きたい」

と思ったとしても、

「じゃあ何の責任も負わずに生きよう」

ということではない。

本音を認めたうえで、

現実との折り合いをつけていく。

この順番が大切なのだと思います。


自分の気持ちを見つけるために、「小さな好き」を拾ってみる

「あなたの人生で、本当にやりたいことは何ですか?」

という質問は、大きすぎるのかもしれません。

だから、もっと小さなところから始めてみる。

例えば、

  • 最近、ちょっと嬉しかったことは?
  • 何をしているときに時間が早く感じる?
  • どんな場所にいると落ち着く?
  • どんな人といると自然体でいられる?
  • 逆に、どんな場所にいると疲れる?
  • 子どもの頃、何をして遊ぶのが好きだった?
  • お金も評価も関係ないとしたら、何をしてみたい?
  • 「ちょっと気になる」と感じるものは何?

こういう小さな質問から始める。

例えば、

「海を見るのが好き」

「夕方の空を見るのが好き」

「人の話を聞くのが好き」

「知らない場所に行くのが好き」

「文章を書くのが好き」

そんな小さな答えでもいい。

人生を変えるような「やりたいこと」である必要はありません。

小さな「好き」の中にも、自分らしさは隠れています。


「嫌い」も、自分を知るための大切な情報

「好きなことが分からない」という人は、

「嫌なこと」を探してみるのもおすすめです。

例えば、

「人前で競争するのが苦手」

「大人数の飲み会が疲れる」

「細かく管理されるのが嫌」

「人の機嫌を取るのが苦しい」

「毎日同じことを繰り返すのが嫌」

こういうことも、立派な自己理解です。

「嫌いなこと」を知ると、

「じゃあ、どういう環境なら自分は楽に過ごせるんだろう?」

という問いが生まれます。

自分らしさは、

「何をしたいか」だけではなく、「何をしたくないか」からも見えてくる。

これは意外と大切なことだと思います。


「やりたいこと」は、最初から大きな夢じゃなくていい

「やりたいこと」という言葉を聞くと、

「人生をかけてやりたいこと」

「仕事にしたいこと」

「大きな夢」

を想像してしまいがちです。

でも、

「今日は散歩したい」

「この映画を見たい」

「ちょっと遠くまで行ってみたい」

「この本を読んでみたい」

「新しいことを習ってみたい」

それだって、「やりたいこと」です。

むしろ、そういう小さな「やってみたい」を無視しないことが、

大きな方向性につながっていくことがあります。

最初から、

「これが僕の人生の使命だ!」

なんて分からなくてもいい。

「ちょっと気になる」

を追いかけてみる。

その先に、

「これ、結構好きかもしれない」

が見つかる。

さらにその先に、

「もっとやってみたい」

が生まれる。

そんなふうに、自分の人生の方向性が少しずつ見えてくることもあるのだと思います。


自分の心の声を聞く時間をつくる

自分の気持ちは、いつも大きな声で話しかけてくれるわけではありません。

むしろ、

「なんとなく嫌だ」

「なんとなくこっちが好き」

「なぜか気になる」

という、非常に小さな感覚として現れることがあります。

だからこそ、忙しい毎日の中で、自分の心を見る時間が必要なのかもしれません。

例えば、一日の終わりに、

「今日、何が嬉しかった?」

「今日、何にモヤモヤした?」

「本当はどうしたかった?」

と振り返ってみる。

たった数分でもいい。

毎日続けていると、

「自分はこういうことが好きなんだ」

「こういうことが苦手なんだ」

というパターンが見えてくるかもしれません。


「分からない」という状態も、そのままでいい

ここまで読んで、

「それでも自分が何をしたいのか分からない」

と思う人もいるでしょう。

でも、それでいいと思います。

人生の方向性が決まっていないことは、失敗ではありません。

迷っているということは、

自分の人生をちゃんと考えている途中

とも言えるからです。

すぐに答えを出そうとしなくてもいい。

「今は分からない」

という状態を受け入れて、

「じゃあ、少しだけ試してみよう」

と動いてみる。

そして、

「これは違った」

「これは意外と好きだった」

という経験を積み重ねる。

その一つひとつが、自分を知る材料になります。


まとめ|「本当はどうしたい?」を、自分に聞いてみる

「やりたいことが分からない」

というのは、

「自分には何もない」

ということではないのかもしれません。

これまでずっと、

「どうするべきか」

「どうすれば嫌われないか」

「どうすれば認めてもらえるか」

を優先してきた結果、

「自分はどうしたいのか」を聞く機会が少なかっただけなのかもしれません。

だから、いきなり人生の答えを見つけなくてもいい。

まずは、

「今日は何がしたい?」

「これは好き?」

「これは嫌?」

「今、僕はどう感じている?」

と、小さな問いを自分に投げかけてみる。

そして、その答えを否定しない。

すぐに行動できなくてもいい。

現実的に難しいことなら、後から方法を考えればいい。

大切なのは、

「自分の気持ちには、ちゃんと耳を傾けていい」

と知ることなのだと思います。

僕自身も、まだその途中です。

「本当は何がしたいんだろう?」

と考えながら、いろいろなことを試しています。

だからこそ、

「やりたいことが見つからない」

ということ自体を、悪いことだとは思っていません。

もしかすると人生というのは、

最初から自分の答えを知っていることではなく、

「これは好きだった」「これは違った」

という経験を一つずつ重ねながら、

少しずつ自分の答えを作っていくことなのかもしれません。

もし今、

「自分は何がしたいんだろう」

と迷っているなら。

今日は大きな答えを出さなくてもいいので、

「今の自分が、ほんの少しやってみたいことは何だろう?」

と、自分に聞いてみてください。

その小さな答えが、もしかしたら、

あなた自身の人生を取り戻していく最初の一歩になるかもしれません。